後悔しないエアコン工事のために
「取り付け工事で相当な追加費用を請求された」「追加費用請求されたけど妥当なの?」など、思われた経験のある方も少なくないのではないでしょうか。実際、エアコン工事では現地の状況に合わせた工事・作業が必要なため追加費用がかかることも多いのと同時に、その料金については不透明なケースもあります。
また、一部の下請け・悪質業者により詐欺的な部材販売の営業もはびこっており、お客様とのトラブルが未だ絶えないようです。
しかし当然ながら誠実丁寧な業者もいて、適切な理由により追加費用がかかってしまう場合もあります。お客様には、それが妥当なのか、そうではないのか見分ける判断力が求められます。
ここではよくあるエアコン設置工事の際の追加費用について悪質業者の存在とともに説明していきますので参考にしてください。
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1.配管パイプ交換・延長による追加費用
エアコン工事の追加費用項目で最も多いのが冷媒配管の延長・交換費用です。これからエアコンの設置や移設を考えている方はしっかり理解しておきましょう。
1-1.配管パイプとは?
エアコン工事で言う配管パイプとは、室内機と室外機をつなぎ、冷媒ガスの通り道となる銅管のことをいいます。エアコンを使用するには必ず必要になるものです。冷媒管とも言われます。
2本1組で、細い方は液管、太い方はガス管と呼ばれたりします。5.6kwまでのエアコンは。太さ:2分3分、それ以上の容量の(ルーム)エアコンではガス管が太くなった太さ:2分4分の配管を使用します。
エアコンを購入しても配管パイプは付属していません。取り付け工事の時に現場で必要な分だけ業者の方で支給となります。ほとんどの業者は標準工事セットとして配管4mまでは標準工事価格に含まれていますが、4mを超える場合には延長費用がかかります。(2分3分配管単価相場は2000円~3000円/m。個人業者の中には1000円/m程度の業者もいるので業者選びで総工事費用に差が出ることもあり)
1-2.冷媒ガスを通し使用すると配管パイプは劣化(硬化)する
配管パイプは新品時はやわらかい(とは言っても銅管なので扱いは慎重に)ので工事もしやすいのですが、一度使用し取り外した中古配管は硬化が進み、その度合いにより扱いの難易度がかなり上がります。
その度合いは配管パイプのメーカーやエアコンの使用頻度、環境に依存するため、設置後数ヶ月でも硬化が進んでいる配管もあれば数年後でも比較的やわらかめの配管も存在します。
さらに銅製の配管パイプは保温材で包まれており、外部環境によってこの保温材もボロボロになったり収縮したりします。
配管パイプの硬化や保温材の劣化を合わせて「配管が劣化している」と言われることが多くあります。
上の写真の上側は新品の配管パイプ(保温材なし)、下側は数年雨にあたるところで使用されていた配管パイプ。下側の配管周りには錆(緑青)が発生し、見た目的には「劣化している」と言われれば「あぁなるほど」と思うこともできるかもしれませんが、多くの場合は新品配管とほぼ変わりません。綺麗な配管=劣化していないと思われるお客様も多いですが、それは少し違います。
1-3.劣化(硬化)した配管パイプの再使用のメリット、デメリットと悪質業者の存在
新品エアコン設置時には新品の配管パイプを使用するので、「延長が必要かどうか」だけで配管代が変わるのでわかりやすいと思います。しかし、中古エアコンの場合には少し事情が変わります。
実際のお客様の話でもネット上でも、取り付け時に「配管が劣化しているから交換が必要で数万円の追加費用を請求された」というような話が結構出ています。つまり、中古エアコンの取り付け時(移設工事含む)に配管費用でトラブルになっているのです。
お客様にとっては、そのエアコンに今まで使用されていてそんなに年数も経っていないから再使用できるだろ!という言い分で、エアコン工事業者にとっては、劣化(硬化)していて工事に支障が出たり設置後に問題が出る可能性があるから新品配管への交換が必要!という言い分でトラブルになるケースです。
結論から言うと、配管の状態と施工現場状況により再使用できるときもあればできないときもあります。
再使用できた場合のメリットとデメリットは以下の通り。
メリット
- 配管パイプ代が節約できる。
デメリット
- 長年使用した冷媒管内には小さなゴミが残留している可能性がありつまりの原因になる可能性がある。
- 配管硬化および断熱材収縮により設置後の美観上の問題が発生する場合がある。
- 配管の潰れなど物理的損傷があれば美観だけでなく性能にも悪影響が出る。
某メーカーにエアコン設置の際の配管パイプ再使用について問い合わせたところ、「新品配管への交換を推奨しているが、ひび割れ等がない場合、特に大きな問題はない。業者の判断による」との、これまた微妙な回答でした
再使用にあたっては各業者で条件もあると思うので事前に確認が必要。「配管(フレア)加工料」なるものが発生する業者もいます。
色々なエアコン工事業者のサイトを覗いていると、「劣化している中古配管は再使用しません」と記載されているサイトも多いですが、「劣化」という言葉に明確な基準がないのが実状で、その会社に実際に問い合わせてみると「現場での判断となります」「当日の現場作業員に聞いてください」などと明確な答えはもらえません。このあたりが追加料金トラブルの原因であるような気がするので注意してください。
ここで注意したいのが再使用しても問題ないとわかっていながら「劣化している」と訴求し強引に高額な配管代を請求する業者の存在です!このような業者は全国対応を謳う会社や引越し業者の下請けエアコン工事業者に多いです。心配なら問合せ時に、配管交換の必要性や交換時の費用を明確に聞き出すか、現地見積りを行うことです!
1-4.配管パイプによる追加費用にはお客様側の理解も必要
配管パイプによる追加費用はエアコン工事の中でも最もよくあることと、悪質業者の存在もあるので注意したいポイントです。しかし、「追加で配管費用を請求されたから悪質業者」だと判断するのはちがいます!
取り付け現場・施工方法は千差万別で、取り付けにある程度の延長が必要だったり、中古配管の状態(つぶれ・癖)によりベンダー(潰れないように曲げる道具)など工具を使用できなかったりなど、現場で業者が確認しなければ確実にわからないことが実際にはあります。「劣化」という化学的で曖昧な言葉ではなく、物理的な理由の際には業者の方が正しいと判断した方がよいでしょう。
2.冷媒ガス補充による追加費用
2.1 エアコンの冷媒ガスとは
冷媒ガスがエアコンの配管内を循環する過程で状態変化することによってエアコンは冷暖房機能を発揮していることはご存知でしょうか?
取り付けていない状態では冷媒ガスはすべて室外機の中に封じ込まれており、設置後に配管パイプを通って循環します。そして取り外すときはポンプダウンという方法で再び室外機に封じ込める作業を行うことで基本的にガスが抜けたり減ってしまったりすることはありません。しかし、工事ミスやその他外的要因で一定量不足してしまうとエアコンは効かなくなり修理が必要となります。
また、各メーカー、各機種でガスの種類(R410A,R32)・封入量は決まっています(取説、室外機に記載あり)。
2-2.悪質業者の見分け方
エアコン移設や中古エアコン取り付けの際に「冷媒ガスが漏れている(不足している)から入れないとダメだ」「ガスがないからエアコンが効かない」という騙し文句でお客様に1万~3万円の追加費用を請求する悪質業者がいます。しかし当然、ガスが無い(不足している)場合もありますので、ケースごとに解説します。
- ケース1
(移設時)取り外すまで問題なく冷暖房が使用できていた。 - 冷媒ガスに問題はありません。業者にウソをつかれている可能性が大きいです。
- ケース2
(中古エアコン取り付け時)取り付ける「前に」前述の騙し文句を告げられた。 - よっぽどがガス圧が弱い、バルブが開ききっている場合以外は封入されているガス量が適量かはほぼわかりません(設置後にわかる)。特に見るでもなくいきなり「ガスが無い、追加費用がかかる」と言われたら要注意!
- ケース3
(中古エアコン取り付け時)取り付け「後に」前述の騙し文句を告げられた。 - 試運転しエアコンが効かなけれがガスが無い、不足している証拠です。業者にガス充填・補充をお願いしないとエアコンはただと送風機と化します。
3.ケーブル交換による追加費用
3-1.ケーブルには2種類ある
エアコンに使用される電気と電気信号のやりとりをするケーブルには太さ(断面積)1.6mm2と、2.0mm2のものがあります。太い方が流させる電気の量が大きく、安全なのでメーカーからも2.0mm2のケーブルを使用するよう推奨されています。なお、取り付けるエアコンの容量(使用する電気量)によっては2.0mm2を使用しなくてはいけません(内線規程)。
しかしエアコンの中でも最も容量の小さい6畳用のエアコンで標準的な工事では1.6mm2のケーブルを使う業者も少なくありません。
3-2.悪質業者による追加費用請求の手口
移設時や中古エアコン設置時、そのエアコンに使用されているケーブルは問題ない2.0mm2であるのに、「1.6mm2の細いやつが使われていて危ない、2.0mm2ものに交換しないとダメ」とお客様を煽って法外な追加費用を請求する業者がいるようです(実際に4mのケーブル交換で8,000円請求されたお客様がいました)。
問題点として一般のお客様に1.6mm2と2.0mm2の太さを見分けるのは難しい点があります。怪しいと思ったら、そのエアコンのケーブルと2.0mm2のケーブルの現物を見せてもらうといいかもしれません。
本当に現エアコンに細い方のケーブルが使われていれば、業者の方が正しいので悪質業者扱いしないように。ケーブル交換を無料で行なってくれる業者もいれば、1mあたり500円前後で交換してくれる業者もいます。
4.真空引き作業費の請求
4-1.真空引きとは?
真空引き作業とはメーカーより作業指定されている重要な作業で、設置後配管に冷媒ガスを通す前に配管内部の空気(水分)除去する作業のことです。超低温の冷媒ガスにより空気中の水分が氷となり機械内でつまらないようにするために必要な作業です。エアコン工事関連のサイトを色々と見た人なら知っている方も多いと思います。
電動真空ポンプとゲージ(マニホールド)を使用し、規定圧まで行います。配管が長い場合や雨、湿気の多いときは状況に合わせて長めに行ったりします。
4-2.真空引きで追加費用というのは現在ではほぼないが注意。
エアコン設置の際は必ず行わなくてはいけない作業になるのでもはやオプション費用としてその費用を請求する業者はほとんどいなくなりました。というのもひと昔前まではいたようです。念のため見積り時や工事開始前に「真空引きは標準で含まれていますか?」と聞いた方がいいかもしれません。
5.室内ドレン断熱費用
5-1.室内ドレンは断熱が必要。
室内ドレンとは文字通り、室内を通るドレンホース(排水ホース)のことでです。夏場冷房を使用した際に室内機で発生する結露水を室外に排水するためのホースです。発生した結露水は冷たく、ドレンホース自体も冷たくなります。そうなると今度はドレンホースが結露し室内にその結露水が垂れることがあるので、配管パイプ同様に断熱する必要があります。
室内を通る部分がほとんどないなら問題ありませんが、室内機とスリーブ(壁穴)位置が離れ、室内を長く這う場合には断熱加工されたホースを使用するか、通常のドレンホースに断熱材を巻くかの作業が必要となります。特にマンションではエアコン設置位置とスリーブ位置が離れているケースも少なくなく、その追加断熱作業費用がかかる場合があります。
5-2.料金表に記載無い業者も多い。
なぜかはわかりませんが、実際に現場ではドレン断熱費用を請求する業者でも確認できる料金表にその項目が無いことがあります。実際に断熱費用を設定している業者ではだいたい1000円~2000円の様子です。
明らかに室内機設置場所と既存のスリーブ位置が離れることがわかっていればお客様の方から業者側に「配管が〇mくらい室内通るけど、断熱費用とかかかりますか?」と質問すると親切かつ、現場での突発な追加費用を避けることもできます。
まとめ
以上見てきただけでも、エアコン工事って追加費用項目が色々あるんです。そしてお客様の無知を理由に詐欺的かつ法外な追加費用を請求する悪質な業者もいるんです。
身入り(利益)が上がれば悪質業者も減るはずなのですが、昨今の価格競争・大手会社によるピンハネ・配管などの部材費高騰、下請けから抜け出せない個人業者などの問題があり、問題解決には相当な時間がかかると思います。だからこそ何年何十年も同様の手口がなくならないわけです。
当然ではありますが、悪質な業者がいる一方で、真面目かつ誠実丁寧に行っている業者もたくさんいます。過去にエアコン工事で嫌な目にあった方も、これからエアコン工事を頼むにあたって心配な方も知識を持って業者探しをしてください。
- 「配管劣化」という言葉には注意だが、メーカーは新品配管への交換を推奨している(明確な基準なし)。
- 中古配管は使用できないわけではない(施工方法、配管の状態による)。業者に交換を訴求されたらその理由と費用を明確に求めること。
- 配管パイプ(2分3分)の単価相場は2000円~3000円/m。個人業者では1000円/mのところもあり。
- 冷暖房が効いていれば冷媒ガスの補充は基本的に必要ない。取り外されているエアコンがガス不足か否かは基本的に取り付け後にしか確認できない。
- 配線ケーブルには太さ1.6mm2と2.0mm2があり、エアコンの容量(使用電気量)によっては2.0mm2を使用しなくてはいけない。
- エアコン設置時の真空引き作業は必須作業なので問い合せ・工事前に業者に確認すること。
- 配管が室内を長く這う場合にはドレンホースの断熱費用がかかることもあり、相場は1000~2000円。
- 特に中古エアコン取り付け時、移設時は見積り以外に想定される現場での追加費用について事前に業者に聞いておくこと。
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